■石岡地方の昔話 ・清涼寺の古狢(むじな) 清涼寺には、今からおよそ100年程前、一匹の古狢が棲んでいた。古狢は境内の大竹藪の中にある池の側の穴に棲んでいて、夜になると大杉に登っては、お月様に化けたり、人に砂をかけたりのいたずらをしていた。寺の南の長屋に鴉の鳴きまねが上手なため「鴉の長さん」と呼ばれる正直者が住んでおり、ある晩に、この長さんの雨戸をトントンと叩く者があった。長さんが雨戸を開けてみても誰もいないことが幾晩も続いた。あまりにしつこいので長さんは黙っていることに決めた。戸を叩いていたずらをしていたのはこの寺に棲む古狢であったが、長さんの返事がないため面白くなくなったのか、そのまま帰っていくようになった。それから何日かたったある日に、近所の若者や子供たちが狢退治の相談をして集まった。子供たちは狢の穴にとうがらしでいぶしをかけて狢を穴からいぶしだして懲らしめてやろうと待ち構えていた。すると寺の本堂の方から大きな声で「こらー、お前たち。本堂が煙で一杯じゃ。涙とくさみがでてかなわん」こわい顔をした方丈さん(住職)が現れたので、子供たちは驚いて皆逃げ出したと。それ以来狢は姿を現さなくなったということです。今でもその時の方丈さんこそ、狢が最後の化け姿であったのではないかと言い伝えられている。 石岡の昔ばなし 仲田安夫著 ふるさと文庫 (1979年)
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