■石岡地方の昔話 ・木間塚長者 尼寺ヶ原の北、北谷に木間塚将監という長者がいた。慈悲深く、困る人には恵み、廃れた国分寺を復興もした。しかし子がなく、伽藍御堂の薬師さまに願かけし、瑠璃姫という女の子を授かった。また長者の近くに幸作という夫婦が住んでいた。こちらも子がなく清水観音に願かけし女の子を授かった。この子の名前に清水とつけた。ある日この長者の屋敷に大悪党が押し入った。この時幸作が死をもって長者を救ったのであった。それから年が流れ二人の女の子も美しく成長した。そんなある日、東馬という良からぬ者が国香の城を乗っ取ろうと企み、まんまと城の宝刀を騙して盗んでしまった。責任を感じた家臣の数馬が切腹してお詫びをしようとした時に、この木間塚長者が現れ、盗まれた宝刀を差し出した。「どうしたのだ」と問うと、「うたたねをしていたら、夢の中に神が現れ”麓の鳥を射よ”と告げた」というのであった。長者が教え通りにすると、鳥が落ちた場所にこの宝刀があったのであった。それから後のある日、長者が遊山の際に鬼が現れ、瑠璃姫、清水の二人の娘をさらっていこうとした。この時、近くにいた数馬の活躍で助かったのであった。数馬も恩返しができたことを大変喜び、これも竜神社のおかげであると深く頭を下げたのであった。 石岡の昔ばなし 仲田安夫著 ふるさと文庫 (1979年)
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